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骨髄バンクドナー登録に思うこと

競泳選手の池江璃花子さんが白血病を公表後、骨髄バンクにドナー登録の問い合わせが増えているとのニュースについて、1999年に急性前骨髄球性白血病のため亡くなった従兄の思いを負って一昨年まで骨髄バンクのボランティアに携わってきた私の意見です。

私の従兄が42才で白血病を発症した1997年、私は骨髄バンクにドナー登録をしました。
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当時のドナー登録は日時と指定した施設を予約し、約束した時間に日赤の血液センターまで出向き、登録のための採血、日赤職員からドナー登録の説明を受け、20分以上のVTR、医師の問診まで合わせて約1時間かかって登録完了でした。
骨髄バンクによる骨髄提供が、もしドナーに選ばれて最終同意し、骨髄液を必要とする患者さんが放射線をあてて自ら血液を作り出せない状態になってからドナーは全身麻酔の下でお尻の骨から骨髄液(血液の元)を採取されて患者さんに提供するドナー側も万が一の危険を伴うことを重々承知しての登録でした。
「献血のついでに簡単にドナー登録もできます」という現在のドナー登録と違うので、当時の登録者数は3万人弱だったでしょうか。
登録年齢も20才~50才まで。

現在、ドナー登録条件の年齢は18才~54才までに緩和され(骨髄提供は20才から)、登録できる施設や場所が広がり、予約なし、VTRなし、簡単な説明のみなど登録が大いに簡素化され、ボランティアに携わる人の尽力もあって登録者数は約50万人にまで増えました。

私がドナー登録して10年が経った時、骨髄バンクから私宛てに「あなたの骨髄液を必要とする患者さんがいます。つきましては骨髄提供していただけますか?」といった内容の確認検査の書類が届き、「骨髄バンクのボランティアに携わっていながらこれ以上の光栄はない」と喜び勇んで日時を約束をして確認検査の病院に行き、コーディネーター、医師立ち会いの下で簡単な検査を受け(この時点では4~5人のドナー候補の1人に過ぎません)、最終的なドナーに選ばれて最終同意に至るまで更に2、3ヶ月かかりました。
そして、最終同意。
それは家族、私の骨髄液を採取する医師、コーディネーター、弁護士立ち会いで本人と家族が署名、捺印し、「この先は骨髄提供を断れません」という場であります。
私の母が同席し、署名、捺印の時になって、「いくらアホで出来の悪い息子でも、我が腹痛めて産んだ何の病気でもない息子に全身麻酔をかけて、『大丈夫』といっても万が一のこともあるのでしょ?」と私の母は涙を流しながら署名、捺印を渋りました。
我が息子が10年以上も骨髄バンクのボランティアに携わっていることも知りながら、義理とはいえ甥が白血病で亡くなったとはいえ、私と事前の話し合いで骨髄バンクによる骨髄提供に同意しているといえ、それは母の本音で割りきれぬ心の中の叫びだったのでしょう。
結果、署名、捺印後に私の健康上に不都合があることが判明し、私の骨髄提供はなくなりましたが、ボランティアに携わっていた者ですら家族の同意という高いハードルとバカでどうしようもない息子への母の愛情を感じる出来事でした。


コーディネーターをしていた人から聞いた話ですが、骨髄バンクからの確認検査のお知らせが届き、確認検査から最終同意までの間に「やっぱり骨髄提供を断ります」と言うドナー登録者が多いそうです。
私が登録した時よりも簡単に登録できる制度に変わったからでしょう。
言わば、無駄なドナー登録が増えただけ。
骨髄バンクドナー登録は"究極のボランティア"です。
本人の強い意志以上に家族の同意、以外にも完全な健康な人から骨髄液を採取する訳ですから、細かい健康診断、ドナーの仕事のスケジュールと患者さんの容態を考慮に入れながらの数度の通院、そして入院、採取の日程の決定と骨髄提供までに様々な高いハードルをいくつも越さねばなりません。
もし今、ドナー登録を考えておられる方がいましたら、一時の感情に流されただけでのドナー登録はやめて下さい。
「登録したけれど、後で取り消してもいいわ」と安直なドナー登録は移植を待つ患者さんにとって失礼な行為にしか映りません。
よくよく考えてドナー登録とご協力をお願いします。



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