沖縄移住～創作落語

お酒に強い人や弱い人、一滴も飲めない人がいて、どちらかといいますと、わたくしはお酒に弱くて、一人でおったら一滴も飲まんのですが、だからといって嫌いでもないんで皆と一緒にワイワイと話しながら飲んだり食べたりする居酒屋の雰囲気が好きですなぁ。しかし、わたくしが一口お酒を飲めば、とんでもない事を口走ったり、ただでさえ悪い記憶力がますます悪うなったり、時折覚えていることもあったり、ちと飲みすぎて酔えば途中で寝ていたり・・・。後で思い出そうとしても記憶の点が現代のナノテクノロジーでも作り出せないくらいの素粒子くらいに小さくなっていて、その記憶の素粒子と素粒子がつながらず、とにかく皆さんにご迷惑をおかけしておるようですなぁ。
わたくし、酒癖が悪いんでしょうかなぁ？昨年のＮＡＨＡマラソンで沖縄に行くまで一度も沖縄に行ったことがないのに誰かと飲みに行く度になぜか「沖縄料理食べに行こ～！」と言うとりますなぁ。飲んで酔っ払う度に「一緒に沖縄行こ！」と女のコを口説かないだけでもましかもしれず・・・、いや、わたくしのことですから、自分で何言うたかなんて覚えていないくらい酒癖が悪いもんですから、もしかしたらそう言うて女の子を口説いてるかもしれませんなぁ。新手のナンパやおまへんでぇ。


女「ラフテーっておいしいわね。ゴーヤチャンプルーも意外においしいのね」
男「ぷっはぁぁ～っ！酔うた酔うたぁ～」
女「大丈夫？」
男「だ、だ、だいじょ～○■×◎△＃～？」
女「へ？何か？」
男「チャチャイヤパンプルー、追加！」
女「チャチャイヤパンプルー？って、パパイヤチャンプルーの言い間違いじゃないの？」
男「し、しもたぁ～！言い間違えたぁ！あー、恥ずかしい～！ろ、ろ、ろれ、ろれ・・・、ろれつがまわらへん」
店員「チャチャイヤパンプルー、かしこまりぃ！」
男「ほほぉー。この店、チャチャイヤパンプルーあるんやぁ。いったいどんな料理やねん？」
店員「はい。チャチャイヤをパンプルーした料理です」
男「チャチャイヤってどんな野菜で、パンプルーってどんな料理法やねん？まっ、ええかぁ」

この男、だいぶ酔っておるようです。
男「沖縄の、つ、つ、つま・・・☆▲◎□！」
女「えええええぇ～っ！沖縄のつま？妻？奥さんがいるの？」
男「いや、沖縄のつまみといえば、豆腐よう。てな訳で店員さん、豆腐ようひとつ！」
店員「はい、豆腐よう、かしこまりぃ！」
女「奥さんじゃないのかぁ・・・（よかったぁ）」
男「あ、それと泡盛も」
女「あたしも泡盛」
店員「泡盛、かしこまりぃ！」

飲めば飲むほど、この男、酔いがさらに激しくなっておるようです。
男「お、おきなわ、いこ～！」
女「（きゃぁ～！『沖縄行こう』ですってぇ。沖縄に二人っきりで旅行なんて）ええ。もちろん行きますわ。ウフッ！」
男「おきなわにいっしょにすもうって・・・お、おきなわに・・・」
女「（しかも『沖縄に一緒に住もう』ですって？それってもしかしてプロポーズ？うれし恥ずかしどうしよう？きゃぁ～！）え？そ、そんなぁ・・・うれしいけれど・・・でもいきなり沖縄に住むって・・・しかも永住なんて・・・心の準備が・・・」 
男「いやいや、そうじゃなくて、テーブルの上が豆腐ようとかチャチャイヤパンプルーとかでこないに小皿が一杯じゃ整理がつかんから、大きな椀１個！大きなお椀にいっしょに・・・そう、そういう風に盛ってぇ。店員さん！」
店員「おっきな椀１個、かしこまりぃ！」
女「え？『沖縄に行って、沖縄に一緒に住もう』じゃないの？そんなぁ・・・、『大きな椀１個、大きなお椀に盛って・・・』って・・・すっかりプロポーズかと思っていたからガッカリ・・・」
この男、普段は整理整頓が下手くそなんですが、周りは汚のうてもテーブルの上だけはきちんと整理できてないとアカンという変なところが几帳面な人間なんですなぁ。

女「あら、とても真っ赤な顔ね。ウフッ」
男「ｚｚｚ・・・△○＃×□☆・・・？」
女「え？」
男「トイレ」
さて、男がトイレに立った瞬間から後ろの席の女の子たちがにわかに騒がしくなり、女の子たちがひそひそと話をしております。
男「トイレ行ったらすっきり爽快や。ぷっはぁ～！酔っ払った酔っ払ったぁ」
女「さっきから急に後ろの席が少し騒がしいのよ。あら？それも『あの人、いちろーさんじゃない？』って声が・・・」
男「そりゃまあ、狭い世の中にはようあるこっちゃ。自分に似ている人が３人おるっちゅうくらいやもんなぁ」
そんなこんなで飲み食いしながら時間が経っていきます。

後ろの席の女の子達「じゃ、いちろーさん、お先に失礼しま～す」
男「あ・・・！ど、ど、ど、どうも・・・（いっぺんに酔いがさめてもた。えらいとこを見つかってもた）」
女「あら、あの女の子たちはお知り合い？」
男「・・・いや・・・まぁ・・・それは・・・何と言うていいやら・・・まぁ・・・えーっと・・・ああぁ・・・」
この男、「まさかこんなところで知り合いに会う」とも思っていなかったもんですから、慌てふためきしどろもどろになっております。
女「あら？さっきまで真っ赤だったのに、だんだん血の気がひくように顔色が悪くなってるわよ？」
男「沖縄だけに青一色や」

決して実話じゃございません。くれぐれもお間違いのないように。