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替え玉~創作落語 [創作落語]

トリノオリンピックまであと100日をきったそうですなぁ。「トリノ」って言うからアホウドリとか、ペンギン、イヌワシ、果てはカラスやスズメが出て、かけっこや玉入れなんかをする運動会の事を鳥のオリンピック・・・てな訳おまへんなぁ。トリノって、イタリアにある地名なんやそうですなぁ。それ以外は何の情報も知りませんわ。
ま、外国人が日本について何を知っているかを聞かれた時に「スシ、ハラキリ」と答えるんとおんなじようなもんでしょうなぁ。

オリンピックといえば、男前のわたくしの出番ですねん。
長野とソルトレークの時は清水宏保に似ていると言われ、アテネの時は冨田洋之に似ていると言われ、2年ごとにそそっかしい人からサイン攻めにあう慌ただしいシーズンですねん。だいぶ、サインも上手くかけるようになりましたわ。今、全国に出回っている清水と冨田とイチローのサインのうち何パーセントが本物でしょうかな?


さて、ここにおりますシミズ似の男、なぜかトリノオリンピックのスピードスケートの会場におります。

「はぁ・・・、えらいツアーに当たってしもたなぁ。『当選しました』っちゅうから何の事かと思たら、『トリノにシミズを応援に行く0泊3日の弾丸ツアーに当選おめでとうございます』やて。あんな変なチョコレートを買うんやなかったわ。『ガーナチョコレート焼き鳥味を食べてあなたもトリノへ行こう!』やて。『トリノと焼き鳥』ってあまりにもベタなネタやがな。他に食うヤツおらんかったんやなぁ。まずかったわ。ツアー客、オレ一人だけやんか。あっという間にトリノに来てもたがな。シミズが滑るん見て、あっという間に帰るだけのツアーやて。トイレにも行く時間もないやんか。こないだの四万十川ウルトラマラソンかて、マラソン直後に深夜にバスで帰ったんでもええ加減弾丸ツアーやったけどなぁ・・・。あ、今のうちにトイレ行っとこぅっと。この調子なら、こないだの四万十川ウルトラマラソン弾丸ツアーの帰りのバスみたいに帰りの飛行機の窓からおしっこせなアカン羽目になりそうや」

トイレに行く時間もないほどの弾丸ツアー。
旅費がタダなら文句も言えませんが、この男がこうやってブツブツ独り言を言いながらスピードスケートの会場内でトイレを探しておりますと・・・。
ゴツン!
「いてててて・・・。あ、すんません。あ、イタリア語で『すんません』って何て言うんやろか?」
コーチ「あっ、シミズ君!こんなところにおったんかぁ!」
「トリノって、日本語通じる所なんや。あ、なーんや、日本人やんかぁ・・・。えらい、すんませ・・・」
コーチ「やっと見つかったぁ!朝からずっと探しとったんやでぇ。今日は大事な決勝やというのに、どこに行ってたんや!確かに昨日はえらい緊張して『もう出ぇへん』なんて言うてたからみな心配しとったんやでぇ。『トリノのトリと聞いただけでペットのオカメインコの亀子を思い出したから寂しくなったから日本に帰る!』なーんてホームシックになってもて、ワシは困ったわ。でも、やっぱりリンクまで来てくれたんやなぁ。ワシはシミズ君のことを信じとったでぇ。ほな、コレに着がえて、スケート靴に履きかえて行こか!ほらほら、いつまでもそんなラフなジーンズなんて格好せんと。まるで観光客みたいに見えるでぇ」
「え?シミズって?お、お、オレが?はぁ?シミズとちゃいまっせぇ!」
コーチ「はよ、行こ!」
「あのぉ・・・あ、ヤバイ!おしっこちびりそうや」
コーチ「ええから、ええから。昨日のことやったら謝らんでもええから、ええから。とにかくはよウェアに着がえて!」
「あ、は、はい・・・」
コーチ「ほな、ワシはここで待ってるから、はよ着がえておいで。着がえたらすぐレースやで!」
「どないしよ。この人、オレのことをシミズと間違えてるがな。当のシミズがどこ行ったんかしらんけど、あの勢いに負けてもたなぁ。とりあえずウェアに着がえるしかないかなぁ・・・」

てな訳で、コーチの言うままにウェアに着がえ、更衣室を出ると、コーチが待っております。
コーチ「ほな、行こか。ええか、今日のリンクはなぁ・・・。ん?シミズ君、何か言いたいことあるんか?」
「あのぅ~。ボク、シミズとちゃうんですが・・・」
コーチ「何を言うてるねん!君はずっと前からシミズ君やがな。生まれた時からシミズやんかぁ。おもろいこと言うヤツやなぁ。ギャグにしてはいまいちやけど、緊張のせいでおかしなことを言うてるだけやな?」
「いえ、わたし、ホンマにシミズやないんですわ。ガーナチョコレートの焼き鳥味でかくかくしかじか・・・と0泊3日のツアーの応援の客ですねん。普段からよう『シミズに似ている』と言われるだけなんですわ」
コーチ「えええええ~っ!なんちゅうこっちゃ!それならそうやとはよ言うてくれんと困るがな」
「言いましたがな。困ってるんはこっちですがな。こんなぴちっとしたウェア着せられて」
コーチ「む、む、む。それにしてもシミズによう似ているなぁ・・・。こうなったらしゃあない!シミズ本人は見当たらんし、レースまであと15分や。ま、似てるっちゅうことで、君が出てくれんか?もう、ウェアに着がえてることやし」
「ええええええ~っ!シミズに似ているというだけで、ウェアに着がえているっちゅうだけで?ぼ、ぼ、ボクが?」
コーチ「まあ、ええからリンクに立って、それなりの格好で滑ってくれたらええから。今更難しいこと言うてもしゃあないし」
「あ、はい。何とかします。テレビで見たように手ぇを左右にブランブランさせて滑ったらよろしいな?」
コーチ「そや!何とかなるやろ。任せるわ。滑れても滑れんでも笑顔だけは忘れるなよ。笑ってごまかせば後は何とかなるわ」
かなり強引なコーチですし、この男も無茶苦茶なヤツですなぁ。
普通、断るでしょうに。まるで落語のような話ですなぁ。

実況「さあ、いよいよスピードスケート最後の組、ニッポンのシミズ登場です。満員の会場は割れんばかりの拍手でシミズを迎えます」
解説のクロイワさん「大一番を控えたシミズ君、いつも以上に男前に見えますね」
実況「スタートラインに並び、入念に・・・あれ、あれれれれ?今日のシミズ、リンクに立っているだけでも足元がフラフラして危なっかしいような・・・どうしたのでしょうか?二日酔いでしょうか?大丈夫でしょうか?」
解説のクロイワさん「4年に一度の集大成ですから、さすがのシミズも緊張しているんでしょうね。私の経験上ですが、スターターがピストルを構えた瞬間に落ち着きますよ」

バーン!
実況「スタートしました。おーっと!あれれ?大きくつまずいた!これはピンチです。ニッポンのシミズ、大ピンチ!ロケットスタートならず!」
「しまったぁ!せめてスタートだけでもええ格好しよう思うたけど、えらいこっちゃぁ!えーい、ここは開き直るしかないわい!ホンマ、笑うしかないなぁ・・・(ニコッ)。あはははは・・・」
実況「シミズ、ロケットスタートに完全に失敗しました。・・・ん??その割にはニコニコヘラヘラしております」
「おっ!何かわからんけれど、笑うたら変に緊張が取れてきたでぇ。あれれ?力が抜けてうまく滑れるやんかぁ」
実況「おおおお~っ!シミズ、得意のロケットスタートに失敗しましたが、持ち直してあっという間にスピードにのってきました。このまま行けば世界記録も夢ではありません。しかも笑いながら滑っております」
「何かわからんけれど、スイスイのスイで調子出てきたでぇ。あ、もう、ゴールやんかぁ」
実況「さあ、ラスト100m!これは金メダル間違いなしです。あわよくば世界記録も見えてきました。残り50m・・・残り10m。フィニッシュしました。やりました。シミズ、金メダル!しかも世界記録更新のおまけつきです」
「おーっ!何かしらんけれど金メダルやんか。やったぁ!さすが、コーチの教えどおりに笑って滑ったら何とかなるもんやなぁ。スケートは氷上(表情)のスポーツや」


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