SSブログ

アキレス腱断裂オムレツ行列~ [創作落語]

予期せぬ出来事とはホンマに突然やってくるんですなぁ。
そりゃ「予期せぬ」訳ですから、天気や花粉症みたいな予報ができん訳で、もしこの予期せぬ出来事が「今日のアキレス腱断裂確率は30%。外出は控えめにしてお家で過ごしましょう~」てな具合に予報できれば、わたくしもアキレス腱断裂を避けられたでしょうなぁ。


アキレス腱「ご主人様もついてない人ですなぁ。こないだは眞鍋かをり似の美人の彼女にふられましたなぁ。女にふられるんに限ってはご主人様は天才的な人ですなぁ。隣の家のメス犬にも吠えられてますもんなぁ」
「ほっといてくれ!オレの趣味は女という女にふられることやねん。犬猫は当たり前。アメーバのメスにもふられるんじゃ!」
アキレス腱「いやぁ、アメーバに雄雌があるとは知りませんでしたなぁ。このふられっぷりはリスペクトしますなぁ」
「リスペクトってイチローか!ふられることに関しては打率はイチロー以上やねん」
アキレス腱「『よっ!日本一のふられっぷり!世界一!アハハハハ・・・』と他人事みたいに腹かかえて笑っておりましたんやでぇ」
「腹かかえて笑うって、大体アキレス腱に腹があるのかどうかもわからんのに」
つい10ヵ月ほど前にアキレス腱を断裂したこの男、何故だかアキレス腱と会話をしております。

アキレス腱「他人事みたいにご主人様の不幸を笑てる最中にエスカレーターを一段上がっただけで私が切れるとはホンマについてませんなぁ。ご主人様は不運のデパート、いや、何でも取り揃えている不幸の総合商社みたいな人でんなぁ」
「エスカレーターを一段上がっただけで『バンッ!』って衝撃音がしたもんやからエスカレーターが上に着くまでに『あれれ?エスカレーターが壊れたんか?最近のエスカレーターはもろいなぁ』って何度も後ろ振り返ったやんか。壊れたんはアキレス腱の方やったとはようできた笑い話やったなぁ。『アキレス腱断裂オムレツ行列』ってジョイマンでも思いつかんギャグができるなぁ。ハハハ・・・はぁ・・・トホホ」
アキレス腱「そりゃ、私は『おらおらおら~!アホボケカスッ!』ってキレやすいんでっせ。アキレス腱断裂は私事ですからブチギレで痛いはずでっせ。ブチギレで痛いはずなのにあまりの不運続きのご主人様の面白さの方が痛みに勝って大笑いしましたわ」
「膝が笑うやなくてアキレス腱が笑うやなぁ。バンッって衝撃音からお前と会話できるようになったのも不思議な縁ってなもんやなぁ」
アキレス腱「そうでっせ。それまでにもご主人様には言いたいことがようさんありましたわ。『あーっ!そんなん言うたらアカンアカン!女の子が引くがな。ありゃりゃー。ご主人様はアホやなぁ。そりゃ眞鍋かをり似の美人の彼女にふられるはずや。この人は私がついてなきゃアカン。一生ついて行ってやらなきゃならん』と思うことばかりでしたわ。これからはご主人様がおっしゃるならどこへでも一生ついて行きまっせぇ」
「それはホンマか?」
アキレス腱「はい。たとえ火の中、水の中。一緒に手術台にも上がった仲じゃないですか!麻酔かける時にご主人様は『五円玉をブランブランさせて眠くなれ~って催眠術で麻酔かけて下さい。催眠術で女の子にふられたことも何もかも忘れさせてください』って寒いギャグをドクターに言うてたやないですか!私自身の手術前やったんであまりの寒いギャグでもご主人様によう注意しませんでしたわ」
「お前こそ、手術ん時にいざ手術台に上がる時になってびびって足がすくんでオレにくっついて上がろうとせんかったやないか!看護師さんとドクターに無理やり抱えられて上がったがな。ウソつき!お前もオレに『一生ついて行きます』って言うわりには言いたい放題なだけやなぁ。どの口がそう言うてるねん!」
アキレス腱「まあまあまあ。手術の後はギプスを巻かれてお風呂にも入れへんし、痒くてもご主人様に『痒いから引っ掻いてくれ』と言ったら迷惑かかる思てなるべくおとなしいして、ご主人様に会えなくてホンマに寂しい1ヵ月やったんでっせ」
「お中元代わりにたまに定規を突っ込んでやったけどなぁ」
アキレス腱「三角定規は尖って痛かったですわ」
「そやろそやろ。ながーい50cmの突っ込んだったやんか」
アキレス腱「それはそうと、先日はせっかくの休日、私は家でのんびりして過ごしたかったのに、ご主人様が『石垣島に行くでぇ』って言うもんだから『行ってらっしゃいませ』って手ぇ振ろうと思ったら、悲しいことに私はアキレス腱だけに手ぇがなくて手ぇ振れんかったんで仕方なく石垣島までついて行きましたがな。まさか、わざわざ石垣島まで行ってジョギングするなんてご主人様もアホな人ですなぁ」
「『走る阿呆に見る阿呆。同じアホなら走らな損々』というやないか」
アキレス腱「いえいえ。『アキレス腱 走りすぎたら 切れてもた』とか『アキレス腱 切れても走る 大バカ者』って松尾芭蕉が詠んだ有名な俳句がありますやんか。のんびりすりゃいいのに」
「そうかぁ。そんな句があったんかぁ。松尾さんも健脚やったもんなぁ。で、季語は何やねん?」
アキレス腱「季語はそりゃ『秋レス腱』ですわ」
「走れるっちゅうことはアキレス腱もくっついたってことや。ドクターもうまい具合にくっつけよったなぁ」
アキレス腱「ドクターが手術するんを見てたらちょうちょ結びにしてましたわ」
「え~っ!アカンがな!片方引っ張ったらほどけるやんか。せめて片ちょう結びにしてくれな。ちょうちょ結びってお土産の寿司やないねんから。大丈夫かなぁ・・・」
アキレス腱「片ちょう結びでももう片方引っ張ったらほどけまっせ。でも大丈夫ですわ。ちょうちょ結びでもほどけませんわ。手術は救急でもなく、夜間でもなく、明るい時間帯にしていますから。アキレス腱だけにヒール(昼)でくっつきます」


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

お花見Jogお花見Jog~その2 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。