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篠山ABCマラソン [創作落語]

世の中、健康ブームと言われ、近年、市民マラソン大会が増えたのもそのせいなんでっしゃろなぁ。かくいうわたくしもそんなマラソン大会にはまってる一人かもしれません。
マラソン大会に出ると、仮装ランナーが結構目に付きますわ。ひよこ、カッパ、魚、サル・・・いろいろおります。まさに動物園。走りに来たんか、仮装大会に来たんかようわからん人達ですが、これが案外速う走りよるんですわ。普通の格好で走ればええのに。仮装して走る人っちゅうんは普通の格好じゃ速く走れんのかもしれませんな。変身前は弱いけど仮面ライダーに変身したら強うなるみたいなもんかもしれませんなぁ。
こんなんに負けたくない思うて、美容院で頭のカットしてもろたついでに眉毛のカットしました。3月6日の篠山ABCマラソン、眉毛を麻呂にして走ります。どうじゃ!麻呂ソンじゃ!

ここにおります男、マラソン大会でいかにすれば速く走れるかをいつも考え、ウェア、シューズからフォーム、食事・・・様々試しましたが、これ以上速くならんとわかりました。
男「色々やったけど、もうこれ以上速うならん。最後の手段や。仮装するしかないなぁ。『マラソンの時には仮装してはならぬ』と先祖代々の言い伝えで仮装ランナーを封印しとってんけど、しゃあないなぁ。アレをするか」
と思いたって散髪に行き、眉毛もカットしてもらいました。普通にカットしたんじゃおもろないって事で眉毛は麻呂にカット。
男「がはは・・・。これはウケるやろなぁ。かぶりもんよりインパクトあるでぇ。ご先祖様には悪いことしたけれど。あ、しもた!この格好で仕事もせなアカンの忘れとった。恥ずかしぃ~!ま、ええかぁ」

仕事はともかく、いよいよマラソン大会になり、眉毛を麻呂で出ますと、やはり沿道の笑いを誘います。
沿道「あはは・・・!おもろい眉毛や。麻呂や、麻呂や」
男「眉毛が麻呂でウケ狙いは思惑通りなんやけど汗が目ぇに入って目ぇ痛いんが難点やな。ん?何かようわからんけど、皆の笑いに気分ようなっていつの間にか先頭におるやんか」
レースは意外にも麻呂が引っ張り、勝負の行方はゴール直前までもつれます。
実況「現在、トップは麻呂です。麻呂、このままゴールか?あと100m。あと50m。あと10m・・・おーっと、麻呂、コースの端で滑ってゴール手前で抜かれたぁ!2位だ!麻呂、2位だ!麻呂2位、残念!箸で滑りやすいマロニー」


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アンドロメダ大星雲~創作落語 [創作落語]

昔は徹夜が毎日続いても翌朝起きて、ちゃんと学校に行っとりましたなぁ。
特にわたくしが通っていた大学は実験、実習が多くて実験と実習の度にレポート書かなならんので、毎日徹夜が続いて、午前3時4時までかかるんは当たり前。ひどい時は日の出の時間までかかっとりました。一睡もせんでも平気な顔して学校に行きよりましたなぁ。今、「同じ事やれ」て言われたらようしませんわ。フラフラになるでしょうなぁ。もう若くないんでしょうかな?ま、学校で寝とったんですが。
徹夜の時は、テレビ見ながらビール飲みながらレポート書いとりました。中でもよう見たんは「らくごのご」ちゅうて、桂ざこば師匠と笑福亭鶴瓶師匠が会場のお客さんから3つの題もろて即興で創作落語作る番組。落語ん中にその3つの言葉が入っとらなアカンのです。ざこば師匠が最後のオチがつかずにそわそわしながら、「落ち着かん、オチつかん」ちゅうて苦し紛れに言うか、まったくオチにならずに泣くのを見るんが面白かったですなぁ。それ見ながらやからレポート書くんもそっちのけで、自分でも落語作るんが当時のマイブームでしたなぁ。名付けて「一人らくごのごごっこ」ですわ。いまだにその癖が抜けへんのでしょうか。

わたくし「あー、今日は3つもレポート書かなアカンなぁ。レポート用紙1冊で足りるかなぁ?おっ、『らくごのご』始まるやんか。司会の酒井ゆきえは一体何歳なんやろ?アカン、アカン、レポート、レポート」
てな具合に大学時代のわたくしはこたつに向かっておりました。
酒井ゆきえ「さあ、今日も3つのお題が出揃いました。『アンドロメダ大星雲』『携帯電話』『オレオレ詐欺』です」
わたくし「アンドロメダ大星雲、携帯電話、オレオレ詐欺かぁ。お、今日もざこばさん、はじまる前から泣いてるがな。アカン、アカン、レポート書かなアカン。ぷっは~!ヒック!」

リーン、リーン!
ガチャ!
オカン「もしもし」
男「えーん、えーん・・・」
オカン「もしもし!もしもし~!」
男「えーん、えーん・・・」
オカン「泣いてばかりでけったい電話(携帯電話)やなぁ。どちら様ですか?東京で一人暮らししてるヨシオか?」
男「うん、お母ちゃん、オレオレ、ヨシオ。えらいことしてもた。ヤーサンの車と事故起こして、ヤーサン怪我させてもた。『治療費出せぃ』ちゅわれて今すぐ100万円振り込めちゅうねん。今から言う口座に振り込んでなぁ。えーん」
オカン「(ははぁーん、これはオレオレ詐欺かもな。だまされたらあかんな。そや、ホンマのヨシオかどうか確かめたろ)わかった。わかったけどなぁ、ところでヨシオ、あんたの好きな食べ物なんやったっけ?」
なかなかしっかりしたオカンですなぁ。普通、息子が泣きながら電話してきたら気が動転して「わかった。お母ちゃんなぁ、今から借金してくるさかいに、すぐ100万でも1億でも振り込むでぇ」て言いまっせ。
男「オカン、息子の一大事に何をのんきな事言うてんねん!隣にヤーサンがおるねんで」
オカン「アホ!私の息子やったら自分の好きな食べ物くらい言えるはずや。言うてみぃ!」
男「えーん、えーん・・・」
オカン「泣いてばかりおらんと言うてみぃ。ほれ、あんた昔、あんこうとトロと目玉焼きが好きで、よう『あんこう、トロ、目玉焼き出せ~』ちゅうとったやんか。ほな、私が『う~ん』て。あんこうとろめだまやきだいせいう~ん、あんどろめだだいせうん・・・ばんざ~い!『略してアンドロメダ大星雲や!』って言うていつも笑うとったやんか。目玉焼きは何とかなってもあんこうとトロだけはどうにもならなんだなぁ」
男「そやそや、アンドロメダ大星雲や。懐かしいなぁ。そっち帰ったら夕飯に出してや」
オカン「嘘や。『真っ赤なウソ』は明石家さんま・・・。ほんまもんのヨシオの好きな食べ物はアンドロメダ大星雲なんかとちゃう!カレーライスや!」
男「(クソッ!おばはんに一杯食わされた)・・・えーん・・・、ヤーサンが・・・100万円振り込めって隣で・・・えーん」
オカン「あんた、ヨシオとちゃうやろ!オレオレ詐欺やな?泣き落としてもアカン!」
男「バレたか。バレたらしゃあない。泣き落としやない。架空口座から引き落としや」

わたくし「あ、また朝までかかってしもた」


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河内のオッサンの唄 [創作落語]

日頃から「・・・でございます」てなご丁寧な言葉使いをし、茶道をたしなみ、身の回りの世話をしてくれる婆やがいて、平々凡々とすごしているわたくしのようなぼんぼんにとって、ちとでもガラの悪い言葉使いとか、タバコとか、バイクとか、不良は憧れでしたなぁ。ヤケになって「今日から不良になったるねん!」て思て、「おう、そやなぁ!今日はええ天気やんけ」て言葉を無理して使っても長続きせずにしばらくしたら「さようでございます」てな言葉使いに戻って育ちの良さが出てしまうもんです。普段からわたくしは至って普通にしゃべっているつもりなんですが、人様からは「言葉使いが上品ですね。全然関西人っぽくないですね」とよく言われとります。

28歳の時。友達3人で居酒屋で飲み食いし、機嫌よう店を出たら店の外で待ち伏せしていたガラのわる~い男2人に囲まれて(こっち3人で向こう2人ですが)、「お前ら店でワシらの話聞いて笑たやんけ」といちゃもんつけられ殴られて蹴られられたんです。わたくしの口からは血ぃ出て、肋骨が痛いから、殴った相手の男達を連れてすぐ交番に行ったら、相手の男達は「居酒屋っちゅうところはワイワイ言いながら楽しく飲み食いする所や。お通夜みたいにくらーい顔して飲み食いする所やない!人が笑ったのを自分達の話を聞かれて笑ったと勘違いするんやったらこれからはお前らは家の押し入れん中で飲め」と10人くらいのお巡りさんに囲まれて説教されとりましたわ。お巡りさんもうまい事言うもんですなぁ。思わず笑ったら肋骨痛なりました。きっと警察学校には大喜利の授業があるんでしょうなぁ。40歳前後のオッサンがお巡りさんの大喜利で説教されてるの見たお陰で不良に憧れるんは辞めました。

男「この前はお巡りさん、面白い事言っていたなぁ。『押し入れん中で酒飲め』って。殴ってきた男も下品な人だったけど、お巡りさんの方がもっと下品で怖かったかもなぁ。この先この前みたいにお巡りさんに助けてもらえるとは限らないし、僕みたいに上品な言葉使いだといつ命奪われるかわからないなぁ。よし!僕もあんなお下品な言葉使いをしよう。では下品な言葉使いをするには独学ではいけないよなぁ。あ、『おげれつ大学下品学部言葉学科』って学校があるじゃないか!うん、ここで勉強しよう」
と、このぼんぼんは決心しました。
先生「1時間目は『河内のオッサンの唄』からや。文句あっかぁ?『おい、よう来たのぉ、ワレ!ビールでも飲んで行かんかぃ、ワ~レ~』って、続けんかい!!」
男「お、お・・・、お・・・い、よくいらっしゃい・・・じゃなくって・・・」
先生「コラーッ!おう、おう、おう、なんべん言うたらわかるねん!覚えが悪いのぉ。おんどれ、そんなんじゃ留年じゃ!」
てな調子であれよあれよと入学から4年が過ぎ、猛特訓?の成果もあって見事に下品な言葉使いをマスターし、首席、いや酒席で卒業してしばらくしたある日、ぼんぼんが街をぶらぶら歩いていると、小学校時代の初恋の女の子に出くわしました。
男「おう、久しぶりやんけ!今どないしてんねん?」
女「あら!小学校時分からしたらずいぶん雑な言葉使いになったよねぇ。あの頃は大人しい上品な可愛いらしい男の子だったのにすごく変わったわネ」
男「そうかぁ?そないに下品になっとるか?がはは・・・ぷーっ、あ、スマン、屁ぇ出た。実はこういう大学に行っとってのぉ、こないだ卒業したばかりや」
女「す・・・、素敵な大学ね・・・。じゃあ、その大学、卒業したら学士号とか修士号とか博士号なの?」
男「学士号?修士号?博士号て何じゃ?ちーっとでも上品な言葉使いしたら『おい!コラ!アホボケカス!何ちゅう言葉使いしてけつかるねん!』って怒号や」


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春はいかなご [創作落語]

人間の感覚ちゅうのは視覚より嗅覚に関しての方が鋭いそうですなぁ。そやから視覚だけでは覚えも悪いですが、そこに匂いの経験が伴ってくると記憶も鮮明になるんだそうです。
私の記憶力ちゅうのが特にええ加減なもんでして、立体駐車場に車止めたら後でどこ止めたかわからんようになってぐるぐる歩いて屋上まで車探したり、前に出会うた事ある人に「はじめまして」と言うたり、人様と比べると特に悪いようです。「悪いようです」としか言えんくらい覚えてません。そんな事ならひとつひとつ何か匂いを嗅ぎながら覚えていってたら今頃東大に入ってたかもしれず、後悔しとります。人間は40万種類の香りを嗅ぎわけられるそうですから40万個の記憶が可能ですなぁ。英単語もstrawberryを苺の匂い嗅ぎながら覚えたらええわけです。決してグレープフルーツの匂い嗅ぎながら覚えたらあきません。「strawberry=グレープフルーツの匂い」「orange=苺の匂い」・・・なーんて思い出す時がややこしい。昔、匂いつき消しゴムちゅうんが流行りましたが、今から思えばあれは物覚えの悪いお子さん向け商品やったんでしょうか?
3月になると、わたくしが住んでいる垂水から明石にかけての多くの家では明石海峡で水揚げされる「いかなご」ちゅうて、めだかよりも更に小さい魚を醤油、生姜、砂糖、サンショ等々で煮つめた「いかなごのくぎ煮」てな佃煮を作る風習があるんですわ。めだかの佃煮みたいなもんです。これを作った家はその日は家中に匂いがこもっているから換気扇を回すんで外を歩いていても「あ!今日、○○さんのお家、いかなご炊きはったなぁ」とわかるんですわ。そやからこの時期に試験を控えていたら大変です。覚えた事全部がいかなごの匂いとリンクしてしまいますモン。

わたくしの家での出来事です。高校1年の3学期末の試験前の事です。わたくし、数学の試験を翌日に控えて柄にもなく勉強しております。
男「あー、覚えられへん。サインコサイン丹波哲郎じゃなくて、いかなご・・・じゃなくて、一酸化炭素たす二酸化炭素は三酸化炭素じゃなくて、いかなご・・・じゃなくて、春はいかなご、いや、あけぼの?あー、覚えられへん。一昨日は東隣、昨日は西隣、今日はお向かいからいかなごの匂い。覚えようとしたら全部いかなごの匂いが邪魔しよるやんか」
覚えようとすればするほど匂いが鼻をつき、勉強よりも匂いとの格闘です。
男「あー、やっぱりアカン!鼻センしてもいかなごの匂いが微かに入ってきよる。皮膚からも入ってきて記憶の邪魔をするやんか。朝から何も食ってへんけど、いかなごの匂いだけで腹一杯や!覚えた事全部いかなごやんか。もうええわ!明日の試験の答え全部『いかなご』て書いたるねん。この匂いだけで腹一杯で眠たなってきたから、もう寝る~!」
そして無事?期末試験も終わって、その頃先生は?といいますと、のんきに成績をつけております。
先生「ん?何や?さっきからいかなごの匂いきつすぎるやんか!今日、嫁さん、いかなご炊きよったんかぁ。うちだけやのうて近所中からもいかなごの匂いやんか。最初はええけど、ここまでなれば『匂い』というより『臭い』やな。焼肉屋の隣の家が、毎日焼肉の匂いがしたら悪臭や言うて訴えたら損害賠償せえっちゅう判決出た事あったけど、ここまでいかなごの匂いがしたらそれと同じやなぁ。○×つけるんに気ぃ散るやんけ」
お陰でわたくし、数学の試験100点でした。


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ぐるぐるバット~創作落語 [創作落語]

誰しも「一瞬だけでもいいからあの日に戻りたい」という願望はありまして、わたくしの場合、今から19年前の高校1年の夏休み前の昼下がり、家で昼寝をしていたあの日(もしかして昭和時代?)でしょうか。
学校から帰ってお昼寝の真っ最中に女の子から電話がかかってきたんですなぁ。「あの~、私とつきあって下さい」と。わたくしは寝起きで、まさに寝耳に水。「ん?『つきあって』って何のこっちゃ?誰かのドッキリか?」と考えて、「今勉強しているから・・・」てな訳わからん理由つけて電話を切ってもたんですなぁ。
翌日も同じ電話がかかってきたけど、完璧にイタ電や思て電話切ってしまいましたなぁ。翌々日からはかかってきませんでしたわ。
今から思えばだまされていてもいいから「はい」って言っておけばよかったんですが。
勿体ない事しましたなぁ。


さて、ここにおります30過ぎの男、ちと怪しげなインターネットのサイトで「タイムスリップ~あの日に戻る方法」なるページを見つけます。
男「お、タイムスリップ?『こうすれば、あの日あの頃に戻れる』って?これで高校1年の夏休みの前の昼下がりのあの日に戻ってあの電話に出なおしたいなぁ。よっしゃ。この方法で早速あの日にタイムスリップや!」
そんな訳でこの男、早速書いてある通りにタイムスリップを試みております。
男「ふむふむ、『ぐるぐるバットで回転し、その時の目の回転速度が地球の自転速度を超えたら昔にタイムスリップが可能』ってホンマかいな?まるで落語みたいな話やなぁ。『まわりに物がないことを確かめてからぐるぐるしましょう』やて。しかし、何と言うたらええか、こんなことで簡単にタイムスリップできたらドラえもんいらずというか、ドラえもんも商売あがったりやなぁ。まぁ、やってみるかぁ」
と、ぐるぐるバットで回り、目を回し数分後。目の回る速度が地球の自転速度を超えたその時!
男「おぉ~!おぇぇぇぇぇ~!気分わるぅ~・・・。二日酔いより気分悪いやんか・・・。・・・ん?むむむ!ここはどこやねん?もしかしてタイムスリップできたんか?間違いない!やったぁ!あの日の昼下がりや。たしか俺は二階で昼寝していたんやけど・・・」
いとも簡単な方法で、見事にタイムスリップに成功したんですなぁ。二日酔いより気分が悪くなるっちゅうくらいであっという間にタイムスリップできるとはおそるべしぐるぐるパワーですなぁ。

さて、トントントンと階段を上がりますと、高校時代のこの男が寝ております。
男「お、俺や。若いなぁ。今も昔も男前やなぁ・・・おっと、こんな事している場合やない。間もなく電話がかかってくるんや。俺が電話に出んかったら、寝てる俺が起きてきて俺が電話に出るやんか・・・?あれ?ややこしぃなぁ」

と、そうこうしているうちに・・・。
リーン、リーン!
男「ほれほれ、かかってきよったわ電話の鳴り方が昭和やなぁ。。『リーン、リーン!』って」
ガチャ!
男「はいはい、待ってましたぁ!」
女「え?」
男「あ、いやいや、こちらの独り言でして・・・」
女「あのう・・・、私とつきあって下さい」
男「そや、あの時にここで『今勉強してるから』なんて訳のわからん事言って電話切ったから今の俺になってもたんや。真夏の暑い日中のクソ暑い2階で勉強なんかしてる訳ないやんか。ここで『はい』って言わなあかんのやなぁ。『はい』やでぇ・・・」
女「あの~、先ほどからボソボソと独り言ばかり聞こえてるんですけど・・・、わたし・・・と・・・つき・・・あって・・・もらえ・・・ませ・・・ん・・・か?」
男「あ、いえいえ、もちろん、はい、こちらこそこんな歳ですがよろしくおつき合いお願いいたします」
女「え?こんな歳って・・・、私と同い年よ?」
男「お、そやそや、君と同じ高校生やった。忘れとったわい」
女「じゃあ、あたし、学校の門の前で待ってるから来てくれますか?」
ガチャン!

早速、デートの約束になったのであります。
相手が誰かも確かめずに電話を切ったこの男、何年たってもそそっかしさだけは直らないもんです。
幸いにもこの男、あれから20年近くたっているのに強いて言えば笑いジワが増えたくらいで高校時代と風貌がほとんど変わっておらず、喜び勇んで鼻の下を伸ばしてホイホイと待ち合わせ場所の学校の門まで出かけていきますと、そこには深田恭子似の可愛らしい女子高校生が待っておりました。
男「おっ、ほんまにおるやんか。しかも、めちゃくちゃ可愛いし、めちゃくちゃ若いやんか。そりゃ当たり前かぁ。何せ高校1年生やもんなぁ。で、あのコは誰やろなぁ?」
女「こ、こ、こ、こんにちわ・・・。さっきは電話でごめんなさい」
男「あの~・・・、失礼ですが、えーっと・・・何ちゅうたらええか・・・あなた様はどちら様でしょうか?」
女「え?私、あなたと同じクラスの・・・さっき帰りにあなたに声をかけたのに返事もしてくれなくて・・・」
男「あ、そやったそやった。帰りは返事もせんとごめんネ。(向こうは高校1年生、こっちはあれから20年近く経ってる34歳なんやけど・・・。この可愛いコは誰やねん?わからんけど適当に話合わせてりゃ何とかなるやろ)」
女「ずっとあなたの事を横から見ていてそれで・・・」
男「そっかぁ!ボクの隣の席のコなんや!」
女「え?毎日会ってるのに顔も名前も覚えてくれてないの?プンプンッ!」
男「なんや?さとう珠緒みたいなヤツやなぁ。あ、いやいや、そうじゃなくてもちろん知ってるでぇ。君の視線はよう感じてるでぇ。あまりにも突然の電話もろたから記憶が飛ぶくらいドキドキしてるんやぁ」
女「わたしだってドキドキして・・・」
まるであだち充の『タッチ』か『H2』の世界です。
男「こんな所で話をするより、ほな、車でドライブでも行こか?」
女「え?車でドライブって、わたし達まだ高校1年生で免許もないのよ」
男「お、高校1年っちゅうのまた忘れとったわい。え~・・・ほな、車は車でも自転車で行こか」
女「うん」
てな訳で、真夏なら普通はエアコンのきいた車行くであろうに自転車で二人乗りしてデートです。真夏の昼下がりに。若いっていいもんですなぁ。今時のギャルなら「え~っ!車でドライブがいい」て言いよるでしょうが、自転車で二人乗りって昭和チックですなぁ。
まさにあだち充の世界。二人は上杉達也と浅倉南か?
男「君は深田恭子に似ていて可愛いね?」
女「はぁ?深田さんって誰?何組のコ?もしかしてあたしと二股かけてるの?」
男「そや、この時代、深田恭子はおらんのやった。え~っと・・・、そうじゃなくて、とにかく可愛いさに深みがあるってこっちゃ。えーっと、渡辺満里奈に似てるかな?」
女「そう、おにゃん子クラブの渡辺満里奈に似てるってよく言われるのよ」
男「ホッ。適当に言ったけど渡辺満里奈はこの時代、おにゃん子クラブにおったんやなぁ。そう考えたら渡辺満里奈も古いもんや」

話がかみ合わない割にも何とか適当に話を合わせているうちに真上にあった太陽も夕日にかわり楽しい時間が過ぎていくもんです。
女「なんだか学校でのいつもの話しぶりじゃなくって説教臭くてオジン臭いしゃべり方だったけど、今日はありがとネ。楽しかったワ。明日は終業式の後でどこか行く?」
男「(む、む、む、話し方に歳が出るんかぁ)今日はごめんネ。ぐるぐるバットで突然来たもんやから、お金も持ってなくて」
女「ぐるぐる?」
男「あ、いやいや、朝からヨーグルト食べ過ぎてお腹がぐるぐる・・・ってオヤジギャグやがな。ま、こっちの話や。メールアドレスか携帯の番号教えるから、携帯にかけてきて」
女「メルモちゃん?携帯の番号って?何を持ち歩きしてるの?」
男「アハハ・・・(そや、この時代、携帯電話なんてなかったんや)。これまたこっちの話や。じゃまた明日、学校で決めよ。バイバ~イ」

男「話がかみ合わなくても『若さ』だけで何とかなるもんやなぁ。じゃ、現在に帰るかぁ。帰って明日出直すかぁ。ありゃ?帰り方調べるの忘れたわい。インターネットで調べるかぁ・・・?って、えらいこっちゃ!この時代まだインターネットないやんか!」


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矢田亜希子~創作落語 [創作落語]

ここに30過ぎの男がおります。モテないこと甚だしく、女性にコクる(コクのあるコーヒーを飲む事じゃない)度にフラれ、フラれ続ける事数知れずハルウララもビックリの連敗記録の保持者で、北は北海道から南は沖縄まで「女探し」のに出かけてはフラれ続け、さりとて、スポーツに秀でているでもなく、キムタクほどカッコイイ訳でもなく、最近の「お笑いブーム」のタレントのように面白い事のひとつが言えるでもなく、ましてや外に出れば転んで怪我をするし、28歳の時には見知らぬ酔っ払いに殴られたり・・・、とことんツキもない、それでもって嘘つきで、何の取り柄もない男であります(注意!決して私のことではありません)。

「このままじゃイカン」と思いながら、ある日の仕事の帰り道でいつものように通勤電車で居眠りをしていますと、網棚から荷物が落ちてきて、頭にゴツン!
心地よくなり体がフワフワと・・・。
男「あー、いたた!あれ?体がやたらと軽いやんか!えぇぇぇぇぇーっ!?ん??俺の下に俺がいる!これはどういうこっちゃ~!」
つまり幽体離脱したんですな。可哀想かな、ツキがない人とはとことんツキがないもんです。
男「まさかこれが幽体離脱ちゅうやつか?えらいこっちゃ抹茶に紅茶!どうしていいやら・・・」
途方に暮れていましたら、ふと気がついた。
男「あれ?俺から皆が見えても皆からは幽体離脱した俺は見えんって事か?歩かなくてええ分、移動も楽々って事か?よし、この際ヤケクソや!どうせ人から見えないんやったら矢田亜希子の家にでも行って矢田亜希子が風呂に入ってるところでも覗いたるねん。しかし矢田の家はどこやろなぁ?」
てな事考えてますこの男、人生の一大事に直面している割には気楽なヤツですな。
と、いつの間にやら矢田亜希子の家のリビングに。まるで映画『ゴースト』のパクリのような展開ですがそこはご勘弁を。矢田亜希子が鼻歌を歌い鼻毛の手入れをしながらのんびりくつろいでテレビをみております。
男「あれれ、あっという間に矢田亜希子の部屋に着いてもた。幽体離脱ちゅうんは便利なもんやなぁ。しっかし、矢田亜希子はいつ見てもべっぴんや・・・」
矢田「♪よ~くかんがえよ~・・・きゃぁ~~~~~~!」
男「え?あれ?矢田亜希子には俺の姿が見えるのか?他の人には見えてないのに、これ如何に?」
矢田「あ、あ、あなた!どちら様ですか?急に現れて驚くじゃないですか?それにあなた、足がない!」
そうです。他の人には見えないのになぜだか矢田さんだけはこの男が見えるのです。
男「いや、決して怪しい者ではございません。いえ、怪しいといえば怪しいが何というか・・・何の因果かこんなことになってもて私自身でもようわからんのです・・・」
と、かくかくしかじか、つい先ほど幽体離脱をしたことから、生い立ち、趣味、はたまた理想とする女性像が和食を上手に作れる人であること、好みの女性のタイプが矢田亜希子であることまで話すうちに矢田亜希子と打ち解けてきまして、会話もはずみ、いいムードになれば時が経つのも忘れるもんです。
矢田「あら、私もあなたみたいなお方が好みのタイプですわ。ウフッ。でも、今頃、幽体離脱した本体の方はどこにおられるのでしょうか?ん?あら、気のせいかしら?だんだんあなたの足がさっきより短くなってますわ?」
男「わぁ!だんだん消えていってるぅ!えらいこっちゃ!さっきから『えらいこっちゃ』ばかり連発しれるけど、今回こそホンマえらいこっちゃ!上半身も消えかかっている」
矢田「きゃぁ~!行かないで!私もあなたのことが好きなの・・・」
と、とうとう男は矢田亜希子の前から姿を消し、着いた先は今度は地獄の閻魔様の前。
閻魔「えへん!ワシが地獄で名高い閻魔大王である。おい、その男!お前の前世での行いをこれから裁く」
男「ひぇ~!天国から地獄とはまさにこのことかぁ!地獄から天国ならよかったのに・・・。瓢箪から独楽、矢田亜希子から閻魔・・・なんのこっちゃ!」
閻魔「おい、そこの男!ごちゃごちゃと独り言が多すぎる。神妙にせい!ふむふむ、閻魔帳によると、お前、生前は大嘘つきであった。が、モテない才能ない運がない・・・と、とことん可哀想なヤツであった。どうじゃ、最後に本当のことを申さぬか?反省の様子が見えたら、元の世界に戻してやってもよいぞ。ここで嘘をつくと舌を抜くわ、元の世界にも戻してやらん!嘘つきは泥棒のはじまりと言うが、お前、何も盗んでおらんか?」
男「はい、決して何も盗んでおりません」
閻魔「何を言うか!この大嘘つきの大ドロボー!この閻魔帳に書いてあるのじゃ。最後にもう一度だけ聞くが本当に何も盗んでないか?正直に言え!」
男「はい、正直に申します。矢田亜希子のハートを盗みました」

ここに登場する男、決して私のことではありません。くれぐれもお間違いのないように。


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龍馬伝~続編 [創作落語]

猫も杓子もサッカー、サッカーと申しておりました2002年の日韓共催のワールドカップから早3年。去年から2006年のドイツ大会に向けて各地域で予選が始まりましたなぁ。およそ200余りの国と地域からわずか32ヶ国しか本戦に出られんのですから、競争率6倍余りの「狭き門」ですな。出られる国と出られん国とではそりゃまぁ大きな違いやそうで、何がどう大きく違うかはようわかりませんが・・・。
日本も「ドイツに行く」ちゅうて必死になっとります。行くだけなら自分で飛行機のチケット買って勝手に行ったらええのにてなもんですけれど、そういうもんやのうてサッカーで勝って行きたいんやそうです。

さて、ここより先はフィクションでおま。実在する人物、国名は本物とは何の関係もございません。
サッカー日本代表監督を引き受けたジイコという男、彼こそかつてプラジル(ブラジルではないプラジル、Prazil)なるサッカーの強国で超有名選手でありました。そんなジイコが代表監督を引き受けたものの、起用する選手が思ったほど働きよりません。何より深刻なのは決定力不足ちゅうて、得点を決められない。
ご存知のとおり、サッカーちゅうのは、手以外を使うてボールをゴールちゅう鉄の棒と網でかこまれた所へ入れる球入れでおま。球1個で1点ちゅう計算で、「ひとーつ、ふたーつ・・・」てな風に数えるたたかが球入れ競技に世界中の人間が一喜一憂、熱狂するんですなぁ。この球入れの1点がなかなかとれんのがジイコ監督の悩み。

ジイコ「おうおう、ワシなら簡単に決めるんじゃが、ワシの教えたとおりにアイツら動きよらんのぅ。どないなっとるねん!ちょちょいのちょいのリズムで蹴れば簡単に点が取れるのに・・・」
ジイコ監督、かなりお悩みのようであります。このままじゃイカンということで、ジイコは決定力不足を解消するために思い立って有望な選手を発掘しに日本中を北は北海道の稚内から南は沖縄の与那国島までを旅に出ることにいたしました。
北海道を出発した頃はまだ余裕があったんですが、北海道には有望な選手はおらず、東北もこれといって際立った選手もおらず、関東、中部、関西・・・と来てもやはりええ選手はおりません。そうこうするうちに焦りながら半ばあきらめ気味にジイコはとうとう四国に。
ジイコ「はぁ・・・、四国まで来たかぁ。あとは四国と九州と沖縄しか残ってへんなぁ。せめて1人でええから、ええ選手はおらんかのぉ・・・。北海道じゃ、間違えてヒグマをスカウトしかけたし、東北じゃ、話題の義経の子孫とやらに『ふりこめ詐欺』で騙されかけるし、散々やったわ・・・」
ジイコがそうやって独り言をつぶやきながら高知のはりまや橋の上を歩いておりましたら、いきなりジイコの目の前に身長5尺5寸の男が上から落ちてきました。
ドスンッ!
男「あいたたた・・・!」
ジイコ「うわぁ~!びっくりしたぁ。だ、だい、ダイジョウブですか?」
男「お~、いってぇ~!・・・と、ところでここはどこじゃ?おい、中岡!中岡はどこじゃ?中岡は無事か?」
どうやら、男は中岡という人を探しておるようです。
ジイコ「あんさん、一人だけが空からいきなり降ってきたけど・・・、お友達でもお探しか?」
男「おう、中岡慎太郎という土佐の男と飲んじょった時にいきなり刺客に襲われて・・・ほれ、この通り、ワシは眉間に傷を負ってしまったが、中岡は無事か?と心配しとるんじゃ」
どうやら、この男、坂本龍馬のようです。
そうです。中岡慎太郎と飲み語りあっていたときに刺客に襲われ命を落としたあの近江屋事件の最中に運良く命と引き換えに何を間違えたか現代にタイムスリップしたようです。しかも地元土佐のはりまや橋に。
ジイコ「もしかして、あなたはかの有名な坂本龍馬さんですか?」
いくらジイコがプラジル人であれ、日本での生活が長いので坂本龍馬のことはよく存じておるようです。
坂本「おう、そうじゃが、なぜにワシの名前を知っちょる?どうやらここは『はりまや橋』と書いてあるからはりまや橋らしいが、土佐も何もかもがえらい変わってしもて何と言っていいやら、あんさんがワシの名を知ってるのだけがうれしいてうれしいて・・・。おりょうと乙女姉さんに会いたいが・・・どこにおるやろか?」
坂本龍馬、それまでいた日本とは全く違う現代の日本にいきなりタイムスリップしてパニックになりつつも、自分の名前を知っている人に出会って、大喜び。ジイコもジイコで、ここではたとひらめいたのであります。
ジイコ「そうじゃ、坂本さん、ワシんところのチーム、いや組に入らんかねぇ?手ぇ以外をつこうて球を蹴りあう試合をする組なんじゃが。組は組でも新撰でも見廻でもない、ヤーサンなんかのややこしい組じゃなくて・・・」
と、ジイコもややこしい横文字を使わずに説明しよると、さすが、異国の文化に通じていた坂本龍馬。
坂本「おう、それはもしかして、さっかぁーちゅうすぽるとではなかろうかの?」
ジイコ「そう、サッカー!」
坂本「それなら、ワシが長崎で仲間達とやっとった。ワシはフォワードじゃった」
ジイコ「それなら、話が早い。我が日本の代表チームに入ってくれ。ここんところ、代表召集も手詰まりでのう。ちゅんスケ(中村俊輔やおまへんでぇ)、ヒゲ(決して中田英寿やおまへんでぇ)やらの海外組に召集をかけても、なんじゃかんじゃと理由をつけてはなかなか来てくれんのじゃ」

てな具合に坂本龍馬が日本代表入りの話がとんとん拍子に進み、坂本龍馬の加入で、ジイコが心配していた日本代表の得点力不足は解消。
そして、坂本龍馬の大活躍もあって、日本代表は向かうところ敵なし。アジア予選も楽に突破。ドイツの本戦でもあれよあれよのうちにジイコの母国のプラジルを大差で破って見事に優勝した試合後。
坂本「あー、いたたたた。体中が痛くてたまらん。ヒゲざん、そこの膏薬をワシの体に貼ってくれんか?」
ヒゲ「はい、はい。しかし、龍馬さん、この臭い何とかなりませんかねぇ。頭のてっぺんから足の先まで全身サロンパスだらけですよ。部屋中、いや、ホテル中がサロンパスの臭いで充満してますよ。試合の後はいつもホテルの近所から悪臭がするって苦情が来ているそうですよ」
坂本「そうかい?でもなぁ、ヒゲさん、ワシは膏薬がないと得点を決められんのじゃ。膏薬が得点源じゃった」
ヒゲ「なるほど。坂本龍馬は船乗りだけに湿布(シップ)が欠かせん」


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